たまごのひよこ「医」日記

たまごのひよこ(twitter: @chicken7egg)です。学生時代に書いていたブログの保管庫。移転したのでリンク使えない部分もありご不便をおかけするかと思います。

タイトルで侮るなかれ「フリーランス女医は見たー医者の稼ぎ方」

昨晩、記事が全然仕上がってなくて下書きがどんどん溜まっているなんて話を書きましたが、今日は

https://twitter.com/chicken7egg/status/1005227148960063493

こんな感じの予定で、実際にカテキョ→練習→研究室関連のセミナーと移動時間が結構あり、その間に読みかけだった本が1冊読めてしまったので、書評記事をば。ビバ書評記事。

 

読んだ本はこちら。

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学校の後輩が刺激的なページをいくつか写真撮ってTwitterに上げていたので、つい気になって借りてしまいました。

タイトルがウザすぎて敬遠してた本だけど、内容はマジで面白いし、大学医局と日本の医療現場のここ30年の変遷が簡潔に書かれてるし、なによりも2Hで読了できる

後輩の紹介ツイートより(RT @鍵)

いつもこう総評みたいなことを書くのですが、今回は後輩のツイートが簡潔で上手かったのでそのまま採用しました。娯楽系読み物という感じで一気に読ませてくれるのに、意外と深いという、絶妙な位置にある本でした。

書評系記事はいつも一般書評と医学書評に分けているのですが、こんな調子なのでどちらに分類するか微妙。

ここ数十年の医療現場の変遷と今後の展望(希望的観測と現実的なところと)について書いてキャリアを考える参考になりそうという意味では医学書評だし、若干色がついていてそれこそDoctor-Xに近い雰囲気の部分もあったし。

とりあえず両方に入れときました(笑)

 

著者(筒井冨美先生)について

1966年生まれ、麻酔科医。非医家庭、国立大卒。米国留学、医大講師を経て、2007年より「フリーランス医師」に転身。本業の傍ら執筆活動や、ドクターXなど医療ドラマの制作協力にも携わる。

「はじめに」にも少しは書かれているけど、だいぶ端折られているので巻末を参考にしておくべきですね。米国留学もして講師までやって、とかなり医局の中で出世コースを辿ってから真のフリーランスになっているのがかなり特徴的だと思います。

両方を結構深く知る立場からのコメントということで、持ち前の文才や展開力と合わせて、非常に読みやすく感じたのでしょう。

ただし、ここまでの有能な方だから色々な案件が入ってきてQOML(Quality Of My Life)を高めながら稼げているということには注意は必要だと思います。 実際に書中にもある通りフリーランスでも「ヤバイ医者」と認定されれば案件はこないこと、「帝王切開」「難しい麻酔」のような技術がなければ健康診断や僻地勤務、寝当直というような案件しかなく、これらはプレーヤーの増加により徐々に美味しくなくなっているということは、考えなくてはならないと思います。

 

変わりゆく専門医制度の中でどう専門性を高めて代えの利かない存在になり、どんな医者になり、どうお金を稼ぎ、どう暮らすのか。

真面目な方はいくらでも話が入ってくるのですが、フリーランスや早期退職といった方を考える上で参考になる資料はなかなかなかったので、面白く、自分に当てはめて考えながら楽しめました。

 

愚にして賢

「バカなようだが、実はかしこい」。後半のキーワードの一つだったと感じました。

「経歴」「留学・研究」「鍛錬」など色々踏まえ、こぞって給料の高くない東京のブランド病院を目指す研修医。

「心に全く寄り添えていない」と言われていたのに開業した勉強熱心な医師を、「厳しいけど腕は確か」ときちんと評価している患者。

「日本人の新しい働き方を提示している」ことに注目してDoctor-Xのシーズン4を観ている20%以上の大衆。

 

皆何も考えていないようで実は意外と本質を捉えているんだよ、というような意味で使われていたのだと思います。

皆に選ばれるものには何らかの理由があると真摯に受け止めるのも大事だよ、斜に構えるのもほどほどにね。

そんなことを言っているように感じました。

 

disられる我が大学

うちの大学についても少し言及があって、概ね「老害軍団が分不相応な事を言っているけど若手はしっかり現状を把握して正しい方向へ歩もうとしている」というような内容でした。

これは半分合っていて半分間違っているような気がします(笑)

まあ要は、前半の分不相応・・・ってところが合ってて、後半部分は、若手を買い被りすぎかなってところですね!!!(後頭部に刺さるブーメラン)

旧帝大ほど旧態依然とはしていなくて、最近は日本や世界に名の通っている先生は出身大学を問わず結構出世していると思うんですけどね!!!

まあいいや!!!

 

コモディティにならないキャリアパス

フリーランス女医は見た」なんて銘打っておきながら、フリーターは勧めず、意外と堅実なキャリアを勧めてくるもので、なんかギャップで思わず納得しちゃいそうになりました笑

QOML重視で産休も取りながらやってきた、帝王切開もできず助産師と同じくらいの技術しかない産科医が何をできるのか、というような辛辣な部分も。 「看護師でも可」というように制度が代わりさえすればいくらでも置き換わってしまうようなコモディティになるなよ、というのが筆者の主張でした。

MBAを取ったりコンサル勤務したりというのも意味がなくて、泥臭く病院経営をした人の方が医療現場も理解できているし強い、ということも書かれていました。 これについては、MBAを取得して活躍されている山本雄士先生のような例もあると思うので僕からは何とも言いにくいですが、確かに明確なビジョンなくただMBAを取ったりコンサル勤務したりしてもその後のキャリアは描きにくいのかもしれません。

イノベーションは泥臭い現場から生まれる」という言葉も、新しい価値を生み出したいなんていう思いは漠然と持っているけれども、特に何もできない人間(私)には刺さりました。 愚直に現場に向き合うことで見える世界があると信じて、今はやれることを片っ端から頑張ってみようという選択は間違っていないはず・・・

 

海外留学という選択について

フリーランス女医は見た」なんて銘打っておきながら(ry

「日本を飛び出すトップ層」という見出しでNプログラムで海外に出た日本人医師がいることを、(医療界にとって)しみじみもったいない、と紹介していました。 他にも外資コンサルや省庁などの就職先が紹介されていましたが、筆者は「日本の医療界を出るという選択は間違いではない」と思っているような、そんな雰囲気がありました。

筆者がどんな留学をされてどんなことを感じたのかが、とても気になりました。

 

最後に

日本とアメリカ、どちらでどんな医者になろうかと思慮を巡らせている最中ですが、読み物のつもりで借りたこの本で意図せず色々考えさせられ、非常に為になりました(笑)

アメリカでCompetitiveな分野(外科やマイナー、麻酔科など)をするのはとても難しそうということもあり、好きな内科分野での留学を一応見据えて現在研究室で色々頑張らせていただいている私。 元々日本でやって行くなら泌尿器科とか産科とかで頑張ってみたいという思いもあったのですが、QOMLを考えてもいいんじゃないかと、日本でやっていく方向になった時のイメージが少し深まったのが印象的でした。

フリーランス女医は見た 医者の稼ぎ方 (光文社新書)

すぐに読める安い文庫本です。是非息抜きにどうぞ。